次男は心身ともに弱って不安定になっていく。
そして、自室に引きこもることが増えていった。
壁に向かって膝を抱えて座り、泣くことが増えた。

この頃、次男は言っていた。
「もっと勉強もスポーツも出来る人になりたかった。
人気者になりたかった。
楽しい人生を送りたかった。
こんなはずじゃなかった。」
自分が思い描いた理想とは、あまりにかけ離れた現実と向き合い、酷い葛藤にさいなまされているようだった。
次男の苛立ちや怒りは、順調に日常生活を送っている長男に向いていってしまった。
長男への八つ当たり
長男は、優しくマイペースだが、次男に対してハッキリと意見を言っていた。
次男の不登校に関しても、長男は次男に対して登校を促していた。
また、次男の良くない点についても、長男は強く指摘したりしていた。
ある日、長男の言い方が気に入らなかった次男は、物凄い勢いで怒鳴りながら、長男に暴力をふるった。
「お前なんかに何が分かるんだよ!?
お前はいいよなぁ!!
普通に学校に行けて、友達もいるよなぁ!!
俺にはそれが出来ないんだよぉぉ!!」
そう言いながら、暴力だけではなく、部屋にある物を長男にぶつけまくっていた。

長男は「やめろ!!」と言ったが、それ以降は黙って耐えていた。
大きな物をぶつけられても、長男は泣きながら耐えていた。
私は必死に次男を止めた。
でも、興奮状態の次男は暴れ続けて、どうにもならない。
次男と長男の間に立ち、何とか次男を落ち着かせようとした。
すると次男は、更に怒って泣き叫んだ。
「なんでこうなるんだよ!?
なんで俺がいつも悪者になるんだよ!?
俺は話を聞いて欲しかっただけなのに!!
なんでこうなるんだよぉぉ!!」
今思い返しても辛くなる、次男の悲痛な叫びだった。
喧嘩した時の約束
私には、双子が小さい頃から言い聞かせたことがある。
「喧嘩をしても、相手に手を出しちゃいけないよ。手を出した方が負けだよ。」
長男は、おそらくその言いつけを守っていた。
だから、どれだけ殴られても、物をぶつけられても、泣きながら耐えていたんだと思う。
長男は、体のあちこちに痣が出来た。
物をぶつけられて、出血したこともある。
至近距離で次男に顔を殴られて、ひどい青痣が出来て、学校を休んだこともあった。
長男を守り切れなかったのが、本当に情けなかった。
そして、長男に申し訳なく思った。
長男が怪我をする度、私は長男に謝った。
その時、長男はいつも「ママは悪くない」と言って、決して私を責めなかった。
ひとつの決意
次男は、小さい頃から優しくて穏やかで、暴力なんてふるう子ではなかった。
しかし、次男の長男に対する暴力は、中学卒業まで続いた。
次男の力は強くなり、私の力ではもう止められなくなっていた。
このままでは、長男はもっと大怪我をするかもしれないと思った。
それだけは、何としても避けたかった。
この頃から、私は長男と次男を引き離そうと思い始めた。
長男を守るには、それ以外にないと考えた。
それは、長男が遠方の高専に入学する大きなきっかけとなったのだ。

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